さようなら
深田晃司監督(2015)年の映画についてです。
平田オリザ氏の戯曲に基づく映画で、文芸的な作品です。
放射能に汚染され、全住民に避難勧告が出される日本でアンドロイドと暮らす白人女性が主人公です。
なかなかよい映画だと思いますが、振り返ってみるとツッコミどころも多いです...
以下、ネタバレ&ツッコミです。
平田オリザ氏の戯曲に基づく映画で、文芸的な作品です。
放射能に汚染され、全住民に避難勧告が出される日本でアンドロイドと暮らす白人女性が主人公です。
なかなかよい映画だと思いますが、振り返ってみるとツッコミどころも多いです...
以下、ネタバレ&ツッコミです。
- 背景の年代
アパルトヘイト撤廃後40年。アパルトヘイト完全撤廃(1994年)の40年後だとすると、2034年が映画の主な背景年ということになります。 - アンドロイド購入年
主人公は10歳の時に日本に移住しており、アンドロイド購入はその直後らしいことが示唆されます。主人公役のブライアリー・ロングさんは1988年生まれ、2015年現在27歳で、これを主人公の年齢にあてはめると、2017年ごろにアンドロイドを購入していることになります。(ちとこれはきびしいですね) - 車いすに乗ったアンドロイド
アンドロイドは足が故障しているので車いすに乗っていることになっています。
石黒研のアンドロイドは二足歩行できないので、これは大人の事情ですね。 - 主人公の使用言語
主人公は、南アフリカ出身で、英語とフランス語と日本語を話し、ドイツ語も理解するようです。子どもの時は英語に南アフリカ訛りがあったことになっています。
10歳で日本に来たにしては日本語に訛りがありすぎます。設定するとすれば、来日直後はインターナショナルスクールなどに通ったためあまり日本語を使う機会がなく、かつ周囲の非南アフリカ英語のおかげで英語の訛りが減少したということでしょうか。そして、大人になってから日本語を習得した...
フランス語とドイツ語は謎ですね。親がフランス系だったとか。大人の事情的には、ここはおそらく元の戯曲の衒学趣味でランボーやブッセの詩を原語で朗読したかっただけ、ということでしょう。
なお、ブライアリー・ロングさんは米国出身で、学部時代にオックスフォードで日本文学を学んだらしいです。(それで現在南アフリカ訛りがないことについて説明的な台詞が入っているわけですね。) - 濡れ場
映画の中盤で唐突に濡れ場が挿入され、これが日本映画である(日本映画の伝統的なフォーマットに従った)ことを思い知らされました。そのせいでR15+指定になったのなら残念です。 - 南アフリカからの難民
主人公の家族は、アパルトヘイト撤廃後の黒人による迫害を逃れて日本に難民申請し、認められたということになっています。そんなことあるのかと思い、検索してみましたが、物議をかもしたというカナダへの難民申請(2009年)以外には見当たりませんでした。この設定には映画の制作上どのような意図があるのでしょう。 - 避難認定の順位
映画では、住民は海外避難の順番待ちをしており、避難が認められた人は番号で発表されるという設定になっています。順番は金持ち優遇だと「邪推」される一方(金持ちはさっさと自分で逃げると思いますが)、家族優先で「中年独身女性」は後回しにされるとも指摘されています。
ところで公共サービス・ライフラインを提供する側は最後まで逃げられないと一瞬思いましたが、アンドロイドがいればサービスは彼らに任せればいいのですね... - 韓国系の彼氏
主人公は(韓国系の)彼氏にプロポーズし、一旦は受け入れられるものの、自分が「難民」だと告白した後、彼氏は避難認定が認められた家族とともに日本を去ってしまいます。「難民」は避難認定順位が低いと判断し、結婚を避けたと解釈できますが、韓国籍が国外避難に有利であるかのような台詞もある一方、なぜ「難民」の避難認定順位が低いのかは謎です。韓国・朝鮮系の彼氏・彼女という設定は「文芸系」日本映画にはよくありますが、ここではなんとなくディスるようなプロットになっており、どのような意図があるのかなと思ってしまいます。 - 腐朽
主人公が死後腐朽していくさまが描写されます。リアルに撮影しようとすれば定点撮影的なものになるので、周囲環境が高速で変化していくようにみえるはずですが、映画では環境も含めて変化にほとんど気づかれないような映像になっています。
腐朽の様子にもいろいろ疑問符が湧きます(ウジは湧かないとか)... - ヌード
主人公は死の直前全裸になって過ごしています。死後の身体の腐朽を見せるための大人の事情だと推測されますが、不自然な気がします。 - 車いすの寿命
アンドロイドの服が経年変化でボロボロになっていくのに電動車いすは健在... - 竹の花
この映画では竹の開花が重要な役割を持っていますが、映像上は赤い花が咲いていて、知られている花の様子(竹はイネ科なのでイネ科っぽい花が咲く)とは違うような気がします。 - 撮影
途中なんとなく昔のモスフィルム(デルス・ウザーラとか)を思い出しました。昔の映画へのオマージュがたくさんありそうですが、私にはわかりません...
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