人口減少社会

今回は、人口が減ると社会保障に問題があるとか土地が安くなるとか電車のラッシュが解消するとかいう問題は置いておいて少しマクロ的なメモを書きます。

  • ある国の人口が減ると物価はどうなる?
    需要と供給が同程度に減れば物価にはあまり影響はないかと思われます。
    生産人口が先に減ると供給が減少するので物価は上がるかと思います。
    労働力の供給が減るので労働コストの上昇によっても物価は上がるでしょう。また、国内生産が減るとその分の需要を輸入しないといけないので、通貨が流出し、通貨価値が減ることによっても物価は上がるでしょう。
  • 物価が上昇すると投資が増大する?
    物価上昇局面では先行投資したほうが得なので投資への圧力が増えるという理屈もあります。しかし人口減少で需要が減っていく社会に投資するのは合理的ではありません。上記のように物価上昇は自国通貨価値下落が原因で起きているとすると、海外通貨または海外資産に投資するのが合理的です。
  • 生産人口減少と技術開発
    生産人口減少は労働コストの上昇をもたらすので、技術開発による生産性向上への圧力がかかります。技術開発により生産性が向上すると生産コストが下がるので物価は低下します。
  • 技術開発と経済成長
    生産性向上によって物価が下がると消費が増大するので経済が成長するという理屈もありますが、人口減少社会では需要も減少すると考えられます。他の国で人口が増大して経済が成長していれば、そこへ生産性向上によってコストが低下した製品を売ることで利益を得て「経済成長」することは可能でしょう。しかしその利益は生産資本を持っている企業に行くので、税などで強制的に還元しないかぎり一般市民に成長の恩恵が行くことはないでしょう。
  • 無限の欲望と無限の成長
    経済学も宗教もシニカルな人間観察も今まで人間の欲望は無限であると考えてきたフシがありますが、現在の人間の生活を見ればそうではないことは明らかでしょう。20世紀後半にいたるまで人間の生物的な欲求が充足されたことはなかったので、 あたかも欲望が無限であるかのように見えていたのかと思われます。平均的な個人の欲望が有限だとすると、総需要は人口に比例する形になります。
  • 資本主義と経済成長
    資本主義社会は(無限の欲望による)経済成長を前提に構築されているようなので、経済成長が停止すると投資が不合理になって「株式会社」の仕組みが崩壊するかもしれません。
  • 資本主義と技術開発
    資本主義は、技術開発による生産性向上による生産資本の価値増大を求めて技術開発に投資してきました。しかし、経済が成長しないとなると技術開発への投資も回収という観点からは合理的ではなくなります(もっとも経済が成長しなくても他の事業者とのパイの取り合いに完全に勝利するまでは投資が無意味になるわけではないと思いますが)。
  • 技術開発と経済合理性
    技術開発をして生産性が向上しても経済は成長しない(コスト低下によりGDPは減少する!)かもしれませんが、同じ経済価値を生み出すための労働時間は減るので、「苦役」が減少する(生活が楽になる)という「経済合理性」があるはずです。
  • 技術開発と政治
    人口が増えても減っても「生活を楽にする」には(技術開発による)生産性向上を図らなければならないと思われます。とすると「生活を楽にする」ための政治的判断は技術開発を促進するということですが、2つの点で政治家には興味を持たれないのではないかと思います。
    1) 結果が出るまでの時間が政治家の時間間隔(1〜2年)とかけ離れている。
    2) 結果が出たとしても生産コスト減少は見かけ上の経済縮小をもたらしかねない。

Commenti

  1. これを書いた後で「セイの法則」すなわち供給を増やすと(価格も減少するので)増やした分だけ消費されてしまう(需要も増える)という仮説を見つけました。それはそうかもしれないので、少しそれを繰り込んだ形で考える必要がありそうです。

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