SDGs

 岩波新書『SDGs 危機の時代の羅針盤』(2020)を読みました。

Wikipedia によれば「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、2015年9月25日に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標」で「その下に169の達成基準と232の指標が決められている」とのことです(全文)。特に貧困の解消と環境の問題が重要視されているようです。

人類(わたしたち)が当面取り組むべき(変革すべき)課題を総括的に国際社会(国家やNGOなど)が国連の枠組みでとりまとめたものということで、大きな意味があると思います。

目標は各国を拘束しないということでまとまった側面もある一方、実効性がないという問題もあります。実際、2019年の首脳級会合では進捗の遅れが指摘されているようです。

メディアの取り扱いのせいか SDGsというと環境問題を思い浮かべていましたが、この本では地域でNGO諸団体などが地道に取り組んでいるその他の諸課題を多くひろっています(共著者の一人がNGOの方であることにもよっているかと思います)。

この本を読んだ動機の一つは「SDGsはアヘンである」という物言いがあってひっかかっていたということがあります。「アヘンである」ということは、それらが擬似問題であって他に取り組むべき重要な問題があるという意味合いかと思いますが、腑に落ちません。資本主義を取り除くことがより重要だと言いたいのかもしれませんが、目標と原因を取り違えている気もします。あるいは気候問題がより重要ということなのかもしれませんが、当人も(SDGsがそうであるように)人権その他の諸問題に広く目を配っているようです。

SDGs はとっつきやすくするためか目標のカラーコーティングが行われており、SDGs を扱う記事や番組はトレンディな感覚を与えます。そこらへんもアヘンぽく見えるのかもしれません。もちろんSDGs を標榜した企業などの「グリーンウォッシング」(やってるふり)が問題であることは言を俟ちません。

いずれにしても SDGs の主要課題である環境問題、特に気候変動問題(そちらを議論する主な会議は COP)は待ったなしです。他の課題と違い解決が遅れると地球環境全体に非可逆的な変化が起きてしまう可能性があるからです。

メディアではSDGs との関係で「1.5℃の約束」(世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることを事実上の目標とすること〜COP26)を喧伝していますが、この目標を達成するシナリオでは、2030年までに2021年に比べCO2排出を2/3(2050年までにゼロ)にしなければなりません。エネルギー消費を押さえるのは実際には難しそうなので、エネルギー源を非化石燃料に置き換えることがより現実的そうです。日本であれば、すべての建築物の屋根に太陽光発電パネルを取り付け、蓄電装置(フライホイールとか)で昼夜電力平滑化を義務付けた上で内燃機関、化石燃料暖房禁止、ぐらいのことをしないと達成できないかもしれません。

一方で「1.5℃の約束」を守ることが難しく、当面の気候変動が避けられないとすれば、防災が要になってくるかと思います。防災基金を作り(COP27では被害支援基金の創設が採択されましたが、大きな人的被害が発生する前に対策を取るべきです)、特に開発途上国での水害や干ばつ対策(治水・水利)を進めることが重要かと思われます。

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